中高生部活応援マガジン ヒーローインタビュー

森 善十朗

空手 : 極真空手

「極真空手」という競技を皆さんはご存知でしょうか。極真空手とは、大山倍達氏が創設した空手団体であり、素手、素足で戦う武道空手です。今回のヒーローインタビューは、「国際空手道連盟極真会館」所属の、今のりにのっている注目選手。第23回全日本ウェイト制大会 中量級チャンピオンの 森善十朗選手にヒーローインタビューをいたしました。(取材・文/山下悠毅 写真/前田恵)

極真空手との出会い

森選手が空手を始めたきっかを教えて下さい。

石川県で友達がやっていたんですよ。田舎町の道場でしたね。小学4年生のころに見学で道場へ行ったのを今でも覚えています。


森 善十朗

空手の第一印象はどんなものだったんですか。

いやー、実はそれまでレスリングをやっていたのですが、練習が異常にハードで嫌気がさしてしまっていたんです。なので、空手もきつかったら嫌だなと、恐る恐る見学に行きましたね。ただ、その道場では理由はよく分かりませんが、楽しそうだなと感じたんです。友達がいたせいもあったかもしれませんが。また指導員の先生も優しくてびっくりしましたね。


森 善十朗

なるほど。レスリングは相当、厳しかったんですね。

ええ、もう「腕立てふせ」も数百回やらされるレベルでしたし、先生も半端なく怖かったですね。


森 善十朗

そうでしたか。そして中学に進まれると、部活動にも参加されていたんですよね。

はい。中学は柔道部に所属していました。柔道を毎日やって、毎日空手の道場にも行ってましたね。


森 善十朗

それは、ずいぶんハードですね。森選手は柔道も強かったんですか?

ぼちぼちですかね。3年生の時はキャプテンをまかされ、石川県大会で3位でした。


森 善十朗

森選手にとっての、部活動と空手道場との違い

では、部活動と、空手の道場の違いを教えて下さい。

道場と一番違うのは部活では人をまとめる役だったという事ですね。道場では一番下。部活は一番上。それを同時に体験できた事が凄くいい経験でしたね。今思うと、部活も一生懸命、空手も一生懸命の三年間でしたね。そして肉体的だけでなく、精神的にも成長できましたね。ただ、キャプテンという立場上、怒っていたことが多かった気がしますね。ただその経験が今の空手の指導員という立場で活きています。子供を指導するときは怒るより、褒める事に一生懸命ですね。


森 善十朗

なるほどー。中学校のときはどんな子でしたか?

そうですねー。まず第一に自分に自信が無かったんですね。逆に無かったからこそ、自信をつけたくて部活や空手を一生懸命やっていましたね。


森 善十朗

いい話ですね。ただそうされていく中で、空手も柔道も上達し、結果が出ていく過程で、森選手の中で何かが変わったというのは有りましたか?

はい。一番の大きな変化は、より結果を求めるといった「向上心」が出てきた事ですね。もっと競技を極めたくなったという気持ちですね。自信をつけたいとか、周りの目が気になるといった事は自然となくなりましたね。


森 善十朗

おお、なんか、すでに中学生にしてトップアスリートの匂いが漂っていますね。では、高校生の時はどうされていたのですか。

高校生になると空手一本でしたね。最初は空手につながると思って剣道部に入りましたが残念な事にあまり一生懸命やる部活ではなかったんですね。一応部活動が必須の学校でしたので籍は置いていましたが、担任と顧問の先生に相談し、理解して頂き、空手を頑張ろうという話になりました。


森 善十朗

そして高校生になると、空手の世界で活躍されるようになったんですよね。

はい。全日本青少年大会 高校生中量級の部・優勝、北信越大会(一般無差別)・準優勝、福井県大会(一般無差別)・3位というのが当時の実績です。


森 善十朗

どうして、苦しい事をわざわざするのか

では少し話しが変わりますが、今、中高生が「部活」に入る意義を見失っている事が大変問題になっています。どうして苦しい、辛い事をわざわざするのかと。そういった子たちに対して、森選手からなにかアドバイスをお願いします。

うーん。あまり偉そうな事は言えませんが(笑)。今、自分は空手をしながら社会人として会社でも働いています。そして今、社会に出てみて一番大切な事は「協調性」だと思うんですよ。なぜかというと、仕事でも練習でも辛いときに乗り越えられるのは仲間の存在がとても大きいからです。そんな仲間がどうしてできたのかと、考えるとそれは部活や空手で培った「協調性」だと思いますね。集団生活でお互いの気持ちや考えを尊重するといった気持ちが培われれば、自ずと周りの方と上手くやっていけますし、困ったときは助け合える事ができます。部活動に入る意義を「社会に出たときの仲間作りの練習の場」と考えてみてはいかがでしょうか。この「協調性」は自分が普段、少年部を指導しているときも大切にしているキーワードですね。さらにそういったものが培われれば、今問題となっているニートなども減るのではと考えます。道場で指導した子が将来、ニートになったら悲しいですしね。


森 善十朗

うーん。とてもいい話ですね。では「アスリート」としての、質問もいくつかさせて下さい。まず、試合前、森選手は緊張とどのように向き合っていますか。

以前は、どうしたら緊張しないで済むか、ばかり考えていました。ただそれは無理と気がつきました(笑)。怖いとか辛いとか、痛いとか、我慢しても、やっぱり怖いし痛いし苦しいですから。どうせ変わらないわけですから、それをどう受け入れるかを考えるようになったんですね。そうすると心の持ち方が変わってきました。受け入れる具体例の一つとしては、すごく緊張したときには、思いっきり笑顔を作るようにしています。これは、母が、自分が一人で上京する際に、「辛くなったら笑いなさい」と言う言葉を贈ってくれたことに起因しています。まあそれを実践するようになったのはそれから、2、3年してからなんですが。試合前も無理やり笑顔を作って、今は楽しい時間なんだよと、自分自身に言い聞かせてます。


森 善十朗

なるほど。緊張しないようにするのではなく、どう受け入れるか工夫されているんですね。では、落ち込んだときはどうしていますか。

結構、自分は落ち込みやすいんですよ。ずっと引きずってしまうタイプですね。そうなったら思いっきり寝ます。ただただ、布団にもぐっちゃいますね。あとは、少し話がそれますが、僕が東京に来たときは、「学生」をみるのがほんとに辛かったですね。


森 善十朗

上京した時に、一番辛かった事

学生ですか。それは空手をやっている学生の話ですか。それとも一般の学生の話ですか。

やってない学生ですね。駅前などで、楽しそうにたむろしていたり、わいわいしていたりするのをみて、羨ましく思いました。ただ、彼らを見ながら、「いつか、自分は彼らにないものを手に入れてやるんだ」と言う気持ちを持てるようになりそれも克服できるようになりましたが。


森 善十朗

確かに、高校を卒業してすぐに単身東京に出てきて、働きながら空手の選手をするわけですもんね。僕はむしろ、その時期に駅前でワイワイしていた側の人間ですから、なんか複雑ですね。では、「印象に残っている、学校や空手の先生や師範の言葉」はなにか有りますか。

以前、師範に「無為自然」と言う言葉を頂いた事がありました。なんでも自然、流れるままを受け入れる、という意味ですね。緊張した時や落ち込んだときの話にもどりますが、落ち込んだときは落ち込む、辛いときは辛くて当たり前、現実から逃げずにあるがままを受け入れる、という言葉です。実際その言葉にずいぶん救われた事がありました。


森 善十朗

日本一になるとどのくらい嬉しいのか

森選手が今後戦いたい舞台はありますか。

やはり、昨年出場権を逃した「世界大会」ですね。出場するのは当然として、日本選手の代表として活躍したいですね。


森 善十朗

ぜひとも、その活躍、楽しみにしています。ただ極真空手の世界大会は無差別級で行われると聞いています。試合前に怖いと思ったことなどは有りますか。

やはり、倒されるのが怖いというのが本音ですね。試合前日、死んだらどうしようとか、ボロボロになったらどうしよう、とか結構よぎるタイプなんですよ。基本的に臆病なんですかね。


森 善十朗

それは意外ですね。では、勝負に負けてしまう「怖さ」みたいなものはどうですか。

もちろんあります。前年度で準優勝した次の年の「体重別の全日本選手権」は「優勝して当たり前」という目で周囲から見られていましたので、あの時は本当に辛かったですね。その時は、負けてしまうと、自分で自分を否定してしまう気がして怖かったです。ただ、今は「負けは負け。次につながるステップ」と捉えられるようになりましたね。最終目標が世界大会というしっかりしたものをもてる様になったからですね。まあ以前は目の前の階段を一生懸命上るのに必死でしたからね。


森 善十朗

やはり選手として一番嬉しかった時は、体重別の全日本選手権で優勝された時ですか。

そうですね。ただ、純粋に嬉しいというのとはちょっと違ったんですよね。小さな頃から、県で一番、日本で一番、世界で一番という夢があり、高校卒業後に上京し、日本一、世界一になったらどれくらい嬉しいのだろうと考えていました。しかし実際に優勝してみるともちろん嬉しかったのですが、なにより、まずは、辛かった・苦しかった日々を思い出し、報われた、そして、その困難を達成できたという思いに対しホットしましたね。そして、優勝したあとに、日に日に周りの方々が喜んで下さり、それがまた嬉しかったですね。大げさかもしれませんが周りの多くの方も幸せになってもらえたという感じですね。


森 善十朗

極真空手の魅力とは

では森選手にとって極真空手の魅力とは何ですか。

まずは、仲間との出会いですね。いい意味での上下関係があり、その経験が社会に出てからもとても生きている事を実感できています。アマチュア競技ですし、損得関係抜きに応援して頂くこともできます。さらに極真空手はちびっこから、壮年の方々にとって大変グローバルな競技で大きな目標をもって、練習に打ち込むことができます。そして、やはり拳を交えて思い切り戦う(殴り合いをする)ことですね。試合を終えたときに生まれる「お互いを認め合える」、そんな気持ちが、練習でも試合でも生まれてきますね。お互い痛めあったから終わった後、癒しあえるというか。


森 善十朗

どういう気持ちで稽古する事が空手の上達に一番大切と考えますか。

うーん。一言で言うと「感謝の気持ち」ですね。


森 善十朗

それはどなたに対してですか。

自分をとりまく全ての方に対してですね。日常でも、練習でも「辛い」と感じたときに、それは自分中心になっているから辛い、というのが僕の考えの根本なんですよ。自分はどうしてこんなにも、辛いんだろう、苦しいのだろうと思った時に、「周りがあるから今、自分が生きていける」と考えると頑張れるんですね。これは中学生くらいの時期から持っている考えですね。それは決して「人のために頑張る」と言うわけではなく、それが自分のできる「周りの方への恩返し」と考えていますね。あとは「前の日」の自分を目標にして、負けない気持ちが大切ですね。


森 善十朗

森選手のターニングポイント

森選手のターニングポイントを教えて下さい。

自分はあまり「勝った試合」というのは重要視していないんですよ。ターニングポイントをあげるとすれば、すぐに思い浮かぶのは高校一年生の時に出た一般部の試合ですね。90キロ位あるロシア人と当たり本当にボロ雑巾のようにやられてしまった時ですね。それが本当に悔しくて。その日の自分にさよならをしいたいと強く思ったのを今でも覚えていますね。戦う前から、「怖い」と思ってしまいましたしね。そこから練習に対する意識が大きく変わりました。


森 善十朗

えっ、高校1年生で90キロの大人のロシア人とですか! でも普通の方なら、そこで、相手は重量級だし、大人だし、外人選手だしといった理由をつけて、「悔しい」という感情が湧かないと思いますが。

いや、とにかく悔しかったですよ。もちろんこうしたら勝てた、とかいうイメージは全然わかなかったんですが、無償に「悔しい」という思いがこみ上げたんですよ。


森 善十朗

今、森選手が戦いたい相手はいますか。

それはもちろん、「ヒーローインタビュー」でブログを書いているあの選手ですね。(笑) まだ直接対決はありませんし。ただ、鈴木雄三選手とは体重別の全日本選手権ではなく、世界大会という大きな舞台で、拳を交えたいですね。


森 善十朗

うーん。それは「ヒーローインタビュー」のスタッフもぜひ見てみたいカードですね。どちらを応援するかは難しいところですが。

いやいや、応援よろしくお願いします(笑)。


森 善十朗

最後中高生にメッセージをお願いします。

「周りがあって自分がいる」ということを常に考え行動すると、おのずといい方向にいく、と僕は日々考えています。


森 善十朗

ありがとうございました。

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